下請工事の完成を確認するための検査と引渡しの時期について

工事完成から工事代金支払いまでの流れ

下請負人が下請工事を完成させた場合には、次の①~④の流れにしがたい下請工事代金の支払いを受けることになります。

①下請工事の完成
   ↓
②下請負人から元請負人への完成通知
   ↓
③元請負人による下請工事の検査
   ↓
④下請負人からの目的物の引渡しの申出
   ↓
③下請負人から元請負人への工事目的物の引渡し
   ↓
④下請工事代金の請求・支払い


元請負人がいつまでも完成した工事について検査をおこなわなかったり、工事の目的物の引渡しを受けないと、下請負人は次のような不利益を受けてしまいます。

  1. 下請負人はいつまでたっても下請工事の代金を受けることができない
  2. 完成した工事目的物の保管責任や危険負担をいつまでも負担しなければならないなど不測の損害をこうむる可能性がある

そのため、建設業法では下請負人を保護するために、竣工検査(完成検査)の早期実施および工事目的物のすみやかな引受けの義務を元請負人に対して課しています(建設業法第24条の4)。

 

以下、①完成検査、②工事目的物の引受けの具体的な時期にについてご説明いたします。

①完成検査の時期

元請負人は、下請負人から完成通知を受け取ったときは、通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に完成検査をおこなわなければならないとされています。

この下請負人からの完成通知については建設業法上、口頭でおこなってもよいことになっていますが、後々のトラブルを避けるために書面で通知することが望ましいでしょう。

なお、建設工事標準下請契約約款においても、下請負人からの工事完成の通知は書面によることとされています。

②工事目的物の引渡し時期

元請負人は建設工事の完成を確認した後に、下請負人から申し出があったときは、直ちに建設工事の目的物の引渡しを受けなければなりません。ただし、下請契約において定められている工事完成の時期から20日を経過する前の一定の日に引渡しを受ける特約がなされている場合には、その特約にしたがえばよいとされています。

下請負人からなされる目的物の引渡しについても、後々のトラブルを避けるために書面でなされることが適切です。

建設工事標準下請契約約款において、目的物の引渡しの申し出も書面によることとされています。これは①と同様です。

【建設業法】

(検査及び引渡し)
第二十四条の四 元請負人は、下請負人からその請け負つた建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から二十日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。
2 元請負人は、前項の検査によつて建設工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに、当該建設工事の目的物の引渡しを受けなければならない。ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から二十日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りでない。

e-GOV 法令検索 建設業法


【建設工事標準下請契約約款】

(検査及び引渡し)
第二十七条 下請負人は、工事が完成したときは、その旨を書面をもって元請負人に通知する。
2 元請負人は、前項の通知を受けたときは、遅滞なく下請負人の立会いの上工事の完成を確認するための検査を行う。この場合、元請負人は、当該検査の結果を書面をもって下請負人に通知する。
3 元請負人は、前項の検査によって工事の完成を確認した後、下請負人が書面をもって引渡しを申し出たときは、直ちに工事目的物の引渡しを受ける。
4(以下、省略)

建設工事標準下請契約約款