建設工事請負契約のひな型|標準請負契約約款について

前回の記事では、契約書にかならず記載する必要がある16事項など建設工事請負契約に関する基礎的な事項をご紹介しました。
建設工事の請負契約の当事者が各々、対等の立場にたった合意に基づいて公正な契約を締結することという請負契約締結に関する基本的な原則(建設業法第18条)もご紹介しました。
しかし、元請負人と下請負人の事実上の力関係を考慮すると、真に対等の立場にたって建設工事請負契約を締結することは実際には難しい面があります。また、合意に基づいて締結された契約内容に建設業法第19条第1項の求める記載事項の不備があるおそれもあり、合意内容に不明確な点、不正確な点があれば後々のトラブルの原因となりえます。
このように下請負人に一方的に不利な請負契約や、不備や不明確な内容の請負契約であれば、建設業の健全な発展や発注者の保護、建設工事の適正な施工という建設業法の目的を達成することができません。
そこで、建設業法においては、①請負契約の適正化を図るために1章まるまるを設ける(建設業法第3章 建設工事の請負契約)とともに、②中央建設業審議会(中建審)を設置し、中央建設業審議会が建設工事の標準請負契約約款を作成し、その実施を勧告することができるとしています(建設業法第34条)。
中央建設業審議会の作成する建設工事標準請負契約約款は以下の4種類があります。
① 公共工事標準請負契約約款 | ・国の機関、地方公共団体、政府関係機関が発注する工事の請負契約 ・電気、ガス、鉄道、電気通信などの常時、建設工事を発注する民間企業の工事も含む |
② 民間建設工事標準請負契約約款(甲) | ・民間の比較的大きな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約 |
③ 民間建設工事標準請負契約約款(乙) | ・民間の比較的小さな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約(個人住宅など) |
④ 建設工事標準下請契約約款 | ・建設工事の下請契約全般(公共工事、民間工事を問わない) |
これらの4種類の建設工事標準請負契約約款は国土交通省のホームページからPDF形式またはWord形式のファイルをダウンロードできます(無料です)。
これらの標準請負契約約款を用いることにより、建設業法の求める建設工事請負契約締結にさいしての記載事項や趣旨にそった適切な契約を締結できます。
また、民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会が発行している工事請負契約約款やその解説書を活用することでも、建設業法の趣旨にそった契約を締結することができます。