少人数私募債による資金調達とは
少人数私募債は社債の一種であり、少人数の縁故者や取引先に限って発行されるものです。少人数私募債は、発行手続きの手間やコストが少なく、中小企業が比較的利用しやすい資金調達の手法です。

目次
少人数私募債の発行要件
少人数私募債の発行要件は、以下の6つです。
- 発行者が会社(株式会社・合同会社・合資会社・合名会社)であること
- 縁故者に限定して、社債を直接募集すること
- 社債引受の勧誘対象者は50名未満で、不特定かつ多数の者に対する募集でないこと
- 社債購入者に証券会社や銀行などの「金融プロ」がいないこと
- 社債発行総額が最低券面額の50倍未満であること
- 取得者から多数の者(50名以上)に譲渡されるおそれがないこと
それぞれの要件の詳細をみていきましょう。
①発行者が会社(株式会社・合同会社・合資会社・合名会社)であること
少人数私募債を発行できるのは、会社に限られます。個人事業主は発行することができません。
以前は、少人数私募債を発行できるのは株式会社に限られていましたが、広く資金調達の円滑化をはかるため、新会社法の施行によりすべての種類の会社(株式会社、特例有限会社、合同会社、合資会社、合名会社)が発行できるようになりました。
少人数私募債発行のメリットとは
資金繰りがよくなる
少人数私募債の返済は通常、償還時に一括でおこなわれます。また、利息の支払いは通常、年に1回です。
これに対して、銀行からの借入れについては、毎月の分割返済が通常です。
少人数私募債による資金調達であれば、毎月の返済を迫られることはなく、償還時まで資金全額を利用することができるので、資金繰りに余裕が生まれ、効率的に資金を運用することができます。
担保が不要
金融機関からの借入の場合には、担保を求めらことが多く、担保提供が不要となる場合には少額の借入に限定されてしまいます。
これに対して、少人数私募債であれば、理解を得られた縁故者に発行されるものであり、担保の有無は問題になりませんし、担保を提供することなく多額の借入も可能となります。
財務局への届出が不要
公募債を発行する際には、財務局への届出書の提出などが必要となりますが、少人数私募債を発行する場合にはこのような手続きは必要ないので、より早く資金調達をおこなうことができます。
社債管理者を定める必要がない
一般的に、社債を発行する際には、社債権者保護のため社債管理者を定めて社債の管理を委ねる必要があります。
これに対して、少人数私募債を募集する際には、社債管理者を定める必要はありません。そのため、社債管理者を選定する手続きと、社債管理者に支払うコストを抑えることができます。
経営に介入されるおそれがない
増資による資金調達の場合、株式を発行して資本金を増やすことになるので株主の構成に影響があり、議決権をもつ株主が会社の経営に介入してくる可能性があります。
これに対して、少人数私募債は社債の1種であり会社の負債です。もちろん、増資とは異なり社債権者に全額返済をする必要はありますが、社債権者には議決権がないので、経営に介入されることはありません。