元請業者がどの程度の関与をしていれば実質的な関与となり、一括下請負とならないのでしょうか?

建設工事の一括下請負は禁止されています。

一括下請負に該当するかどうかは、元請負人が下請工事に実質的に関与しているといえるかどうかに関わってきます。

元請負人が下請工事に「実質的に関与している」のであれば、一括下請負には該当しません。

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では、どの程度の関与があれば、下請工事に「実質的に関与」していたと認められるのでしょうか?

この点について国土交通省は平成28年10月14日通知「一括下請負の明確化について」で、一括下請負の判断基準として、元請・下請がそれぞれ果たすべき役割を定めました。

以下、ご紹介します。

①元請(発注者から直接請け負った者)が果たすべき役割

元請は、以下の事項の全てをおこなうことが求められます。

以下の事項の全てをおこなわない場合には、一括下請負に該当すると判断され、あらかじめ発注者の書面による承諾を得ている場合を除いて、禁止されます。

施工計画の作成●請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成
●下請負人の作成した施工要領書等の確認
●設計変更等に応じた施工計画書等の修正
工程管理●請け負った建設工事全体の進捗確認
●下請負人間の工程調整
品質管理●請け負った建設工事全体に関する下請負人からの施工報告の確認、
 必要に応じた立会確認
安全管理●安全確保のための協議組織の設置および運営、
 作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
技術的指導●請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等、法令遵守や職務遂行の確認
●現場作業に係る実地の総括的技術指導
その他●発注者等との協議・調整
●下請負人からの協議事項への判断・対応
●請け負った建設工事全体のコスト管理
●近隣住民への説明

②下請(①以外)が果たすべき役割

下請は、以下の事項を主としておこなうことが求められます。

施工計画の作成●請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成
●下請負人の作成した施工要領書等の確認
●元請負人等からの指示に応じた施工要領書等の修正
工程管理●請け負った範囲の建設工事に関する進捗確認
品質管理●請け負った範囲の建設工事全体に関する立会確認(原則)
●元請負人への施工報告
安全管理●協議組織への参加、現場巡回への協力等請け負った範囲の
 建設工事に関する労働安全衛生法に基づく措置
技術的指導●請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等、法令遵守
●現場作業に係る実地の技術指導
その他●元請負人との協議
●下請負人からの協議事項への判断・対応
●元請負人等の判断をふまえた現場調整
●請け負った範囲の建設工事に関するコスト管理
●施工確保のための下請負人調整

ただし、請け負った建設工事と同一の種類の建設工事について単一の建設業者と下請契約を締結するものについては、以下に掲げるすべての事項をおこなうことが必要とされています。

  • 請け負った範囲の建設工事に関する、現場作業に係る実地の技術指導
  • 自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議
  • 下請負人からの協議事項への判断・対応

その他の注意点

建設業者は工事現場に技術者(主任技術者または監理技術者)を配置する必要がありますが、単に現場に技術者を置いているというだけでは、①②に記載する事項をおこなったことにはなりません。

また、元請負人との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者を工事現場に配置しない場合には、「実質的に関与」しているとは認められません。

 

関連リンク:建設工事における一括下請負の判断基準を明確化しました~実質的に施工に携わらない企業の施工体制からの排除~(国土交通省)