廃棄物とは|有価物との判断基準(総合判断説)について

 

廃棄物処理法の対象は「廃棄物」です。 

廃棄物ではないものを運搬したり、加工(処分)しても、廃棄物処理法の規制が適用されることはありません。

 

そのため廃棄物の管理や処分に携わる方にとって、排出されるものが「廃棄物」に該当するかどうかの判断はとても重要になります。

 

では、「廃棄物」とは、どのようなものをいうのでしょうか。

 

「廃棄物」の定義

 

廃棄物処理法第2条第1項によれば、「廃棄物」とは「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形条または液状のもの(放射性物質およびこれによって汚染された物を除く)」とされています。

 

このような定義をもとに、以下のものは廃棄物処理法の対象にはならないとされています。 

  • 有価物
  • 気体状のもの
  • 放射性物質およびこれによって汚染させた物
  • 港湾、河川などのしゅんせつに伴って生ずる土砂その他これに類するもの
  • 漁業活動に伴って漁網にかかった水産動植物等であって、当該漁業活動をおこなった現場付近において排出したもの
  • 土砂および専ら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの
  • 他の法律で規制されている廃棄物

 

廃棄物かどうかの判断基準

 

環境省は、令和3年4月14日の通知において、廃棄物に該当するかどうかの判断基準について次のように示しています。

 

廃棄物とは、占有者が自ら利用し、または他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、①その物の性状、②排出の状況、③通常の取り扱い形態、④取引価値の有無および⑤占有者の意思などを総合的に勘案して判断すべき

環境省「行政処分の指針について(通知)」(環循規発第2104141号)

 

このように主な5つの判断要素をもとに、廃棄物か有価物かを総合的に判断する考え方を総合判断説といいます。

 

5つの判断要素の具体的な内容は、次のとおりです。 

① 物の性状利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境の保全上の支障が発生するおそれのないものであること
② 排出の状況排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること
③ 通常の取り扱い形態製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと
④ 取引価値の有無占有者と取引の相手方との間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見てその取引に経済的合理性が認められること
⑤ 占有者の意思客観的要素から社会通念上合理的に認定しうる占有者の意思として、適切に利用し、もしくは他人に有償譲渡する意思が認められること、または放置もしくは処分の意思が認められないこと

 

記載した内容に該当すれば「有価物」と判断されやすくなります。

 

このように、「廃棄物」か「有価物」かの判断は、排出物を取り扱う当事者の意思だけではなく、5つの判断要素を用いて総合的におこないます。

 

 

このように「廃棄物」か「有価物」かを総合的に判断するので、「とりあえず低額な代金を支払い実態にみあわない有価物にみせかけて廃棄物処理法の規制を免れる」という不正は許されません。

 

例えば、次のようなスキームは許されません。

  • 収集運搬業者が排出事業者から排出物を低額で買い取る → だから有価物
  • 有価物であれば廃棄物処理法の規制の対象とならない → 処理委託契約の締結やマニフェストの交付は不要
  • 排出事業者から収集運搬業者に運搬手数料などを支払う → あくまで有価物であることを前提に手数料を払っているだけ

 

環境省の通知でも、次のように述べられています。

本来、廃棄物たる物を有価物と称し、法の規制を免れようとする事案が後を絶たないが、このような事案に適切に対処するため、廃棄物の疑いのあるものについては以下のような各種判断要素の基準に基づいて慎重に検討し、それらを総合的に勘案してその物が有価物と認められるか否かを判断し、有価物と認められない限りは廃棄物として扱うこと

行政処分の指針について(通知)(環循規発第18033028号)

 

 

先ほどの例のように廃棄物処理法の規制を免れようとする悪質で意図的なケースではないとしても、事業者が「有価物」に該当すると判断したものの、行政庁から「廃棄物」であると判断される可能性はあります。

「廃棄物」「有価物」かの判断を迷うときには、管轄する行政庁・自治体に事前に十分に確認することをおすすめいたします。

 

廃棄物には「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類があります。

これらの違いについては、下記の関連記事をご参照ください。

 

関連記事:一般廃棄物と産業廃棄物との区分について