建設業許可が必要となる「建設業」「建設工事」とは

そもそも「建設業」や「建設工事」とは、どのような内容のものでしょうか?

建設業法では、500万円位以上の「建設工事」を受注するためには、建設業許可を取得していることが必要とされています。反対にいえば、どれだけ高額な業務を請け負ったとしても、「建設工事」でなければ建設業許可を受けることは必要ありません。

また、そもそも「建設工事」にあたらない業務の経験を積み重ねたとしても、経営業務の管理責任者や専任技術者に必要とされる実績として認められることはありません。

こちらの記事では建設業許可が必要とされる「建設業」や「建設工事」について、詳しく解説しています。

「この業務を請け負うためには建設業許可が必要なのか?」「この業務は建設業許可を取得するための実績として認められるのか?」といった疑問がある方に、参考になる記事となっています。

「建設業」とは

そもそも「建設業」とは、「業として建設工事の完成を請け負うこと」または「建設工事の完成を請け負う営業のこと」をいいます。

元請け、下請け、その他どのような名義・名称や立場でおこなうかは問われません。

例えば、個人事業主であっても、業として建設工事の完成を請け負うのであれば、建設業を営んでいる、あるいは建設工事を請け負ったといえます。

  • 「業として」「営業として」とは、利益をい得ることを目的として、同種の業務を反復・継続しておこなうことをいいます。
  • 「請け負う」とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方その仕事の結果に対して報酬を与えることを約束することをいいます。例えば、建設工事現場に人工出しをしたというだけであれば、建設工事を請け負ったとはいえません。

「建設業」に該当しないケース

次のようなケースは「建設業」に該当しません。

  1. 自家用の建物や工作物を自ら施工する場合
  2. 他の官公庁から委託を受け官公庁が施工する場合
  3. 不動産業者がお客様からの発注にもとづいて施工するのではなく、建売住宅を自ら施工して販売する場合

1、2のケースは、営利目的とはいえないので「業として」や「営業」ではなく、「建設業」に該当しません。

3のケースでは、自社で販売する建売住宅であるため、相手方から「請け負う」とはいえないので、「建設業」に該当しません。

これらのケースのように、そもそも「建設業」に該当しないのであれば、当然のことですが建設業許可を取得する必要はありません。

建設業法上の「建設工事」とは

建設業法では「建設工事」について、「土木建築に関する工事で別表第1の上欄に掲げるものをいう」と規定されています(建設業法第2条第2項)。

これを受けて別表第1では、次のように2種類の一式工事と27種類の専門工事を掲げています。

一式工事の種類

  1. 土木一式工事
  2. 建築一式工事

専門工事の種類

  1. 大工工事
  2. 左官工事
  3. とび・土工・コンクリート工事
  4. 石工事
  5. 屋根工事
  6. 電気工事
  7. 管工事
  8. タイル・れんが・ブロック工事
  9. 鋼構造物工事
  10. 鉄筋工事
  11. 舗装工事
  12. しゅんせつ工事
  13. 板金工事
  14. ガラス工事
  15. 塗装工事
  16. 防水工事
  17. 内装仕上工事
  18. 機械器具設置工事
  19. 熱絶縁工事
  20. 電気通信工事
  21. 造園工事
  22. さく井工事
  23. 建具工事
  24. 水道施設工事
  25. 消防施設工事
  26. 清掃施設工事
  27. 解体工事

このように別表第1には29種類の建設工事が掲げられていますが、建設工事の具体的な内容や例示は通達や告示で示されています。

建設現場では様々な関連業務が関係し複雑に絡みあっていますが、建設現場における業務であっても全てが「建設工事」に該当するわけではありません。わかりやすい例では、建設現場における警備業務は「建設工事」といえません。

建設現場における業務が「建設工事」に該当するかどうかは、契約内容と実際の業務内容を個別具体的に判断する必要があります。

建設工事に該当しない業務の具体例

次のような業務は、建設業法における「建設工事」に該当しません。

  • 剪定、草刈り、除草、伐採
  • 工事現場の警備、警戒
  • 建築物・工作物の養生や洗浄
  • 道路・緑地・公園・ビル等の清掃・管理
  • 電球などの消耗部品の交換
  • 施設・設備・機械などの保守・点検
  • 発注者から貸与された機械などの保守・点検
  • 調査、測量、設計
  • 据付けなどをおこなわない資材・機材の運搬・運送
  • 運搬、残土搬出、土壌分析、地質調査、埋蔵文化財発掘、観測・測定を目的とした掘削
  • 船舶や航空機など土地に定着しない動産の築造・設備機器取り付け
  • 自家用工作物に関する工事

以上の業務は建設業法における「建設工事」には該当しません。

船舶や航空機のように土地に定着していないもの(動産)の築造や建造は、そもそも建設工事ではありません。これらの内部の電気、給排水設備、空調設備、内装などの工事も建設工事に該当しません。

観測や測定、調査以外の目的の掘削であれば、とび・土工・コンクリート工事に該当する可能性があります。

このような業務を500万円以上の請負金額で請け負う場合であっても、建設業許可を取得している必要はありません。

また、このような業務を積み重ねたとしても、建設工事を請け負った実績や経験となりません。

建設工事に該当する業務の例具体例

次のような業務は、一見すると「建設工事」にあたらないようにも思えますが、建設業法上の「建設工事」に該当します。

  • コンクリートポンプ車のオペレーター付きリース契約で、派遣されたオペレーターが建設工事の完成を目的としておこなう業務
  • 建設工事の目的物の完成を直接の目的とする業務ではないが、仮設や準備工の施工をおこなう業務

まとめ

建設業法上の「建設業」「建設工事」に該当しなければ、業務を請け負う場合でも、そもそも建設業許可を取得する必要はありません。

また、建設業許可を取得するうえで必要となる実績として認められません。

このような判断をおこなうためには、請け負った業務が「建設工事」かどうか慎重に判断する必要がありますが、「建設工事」に該当するかどうかは、実際の業務内容を個別具体的に判断する必要があります。